国東半島山ガイド
四方山話その20  姫島の山


 ガイド本掲載No.56は「矢筈岳」である。
 「矢筈」というのは、新明解国語辞典によると「矢の、弦にかける部分」「棒の先にふたまたをつけて、掛け軸を掛ける用具」である。つまり、「矢筈」の付く山というのは二股の山、双耳峰の山を名付けるときに使う。
 「日本山名事典」では、全国に「矢筈」の付く山は40座ある。けっして暇ではないのだけど全て地図で確認したところ、姫島矢筈岳のような独立峰の矢筈岳というのは2~3座しかない。「矢筈岳」でない双耳峰を探しても独立峰のきれいな双耳峰はなかなかない。四方山話その18でも記したが、全国的に見ても「由布岳」がいかにきれいで見事な双耳峰であるかがよくわかった。
 ところで姫島の「矢筈岳」であるが、地図で見てもわかるように、実はきれいな双耳峰ではない。山腹の南西側に小ピークがあるだけだ。ほとんどの人が双耳峰というイメージはないと思う。対岸の国東半島から見ても「矢筈」には見えない。
 ではなぜ「矢筈岳」なのか。実は姫島の「矢筈岳」が矢筈に見えるのは姫島港の堤防付近からだけなのである。舟で漁から帰る時島民が目印にした山が港付近で矢筈に見えたので「矢筈岳」と呼ばれたのだろうと推測する。
 なぜ、姫島港堤防付近からだけなのか。詳細は下の地図で説明するが、矢筈に見えるもう一つのピークは山頂より56mも低い。したがって矢筈に見えるのはその210mピークが山頂より手前で山頂とほぼ被らない位置、しかも同じ高さに見えるためには遠すぎない近すぎない位置からだけなのである。もう一つ地形的に問題なのは、山頂と210mピークの間に210m~220mの円い台地(小さな溶岩ドーム)があり、場所によってこの台地が真ん中に位置する三俣に見えるため、双耳峰に見えない。
 いずれにしろ姫島「矢筈岳」は、ピンポイントの矢筈なのである。

  また、ガイド本掲載No.57は「達磨山」である。「達磨山」の名前の由来は、ガイドページのTopic欄にも記載しているが、県図書館所蔵昭和55年発行「国東半島の地名あれこれ」によると、達磨の座禅した像を模した起きあがりこぼし、いわゆるダルマさんに山の姿が似ているからということらしい。しかし、どこがダルマなのかよくわからない。しいてあげれば、麓の西浦集落からみた達磨山の山頂と三角点の二つのピークがダルマの眉毛に似てなくもないが。山頂に「達磨堂」があったというもう一つの説の方が正しいのかな。
 それはさておき、ガイド本には104.8mの三等三角点「達磨」を記載しているが、最新の国土地理院地図では三角点記号がなくなっているのに気が付いた。なぜなのか国土地理院に問い合わせると、「三等三角点「達磨」は2008年に確認ができず現況状態が「不明」となったために、表示をしておりません。」と回答が返ってきた。
 ところが、2017年3月20日に姫島三山の確認登山を行った時に三角点は確認している。そのことを再度国土地理院に写真添付して問い合わせたところ、「「不明」として処理された当時の状況については正確に把握できないため、十分な回答をお返しすることができず申し訳ございません。お送りいただきました情報を参考に今後の基本測量や公共測量に利用が可能な状況であるかを十分に確認したうえで適切に処理させていただきたいと存じます。貴重な情報をありがとうございました。」という回答だった。再度確認してもらって三角点記号を復活させてもらいたいものだ。

さて、ガイド本掲載No.58の「焼野岳」を含めて姫島三山は、全て火山である。矢筈岳火山は複数の溶岩ドームの複合体、達磨山火山は三つの火口を持つ、焼野岳を含む金火山は五つの明確な溶岩ドームからなるなどそれぞれ特徴があり面白い。この三つを含めこの小さな島姫島には七つの火山がある珍しい火山島なのである。

矢筈ヶ岳(山口県防府市)
独立峰の典型的な矢筈の山
矢筈岳(宮崎県日之影町:比叡の真向かい)
この山はまさに矢筈
矢筈という名前でないきれいな双耳峰をいくつか
斜里岳(北海道)
青葉山(京都府舞鶴市)
二上山(大阪府太子町、奈良県葛城市)
国東の山小牟礼山も
でもやはり由布岳が最もきれいな双耳峰
姫島の矢筈岳もきれいな矢筈に見える位置が(フェリーから)
前の写真のようにA地点から見るときれいな矢筈に見える。下のグラフで分かるように山頂とP210mの見た目の高さも変わらないのがわかる。B地点からも矢筈に見えそうだが、山頂とP210mの間にある210m台地が三俣となる。A地点より沖に出たC地点ではピークが重なって円錐型の山となる。D地点からも矢筈に見えそうであるが、実際にどう見えるかはわからない。E地点からはP210mが山頂より低いので矢筈には見えない。
実際に港付近からは二俣でなく三俣に見える。(Googleより)
達磨山頂からはP210mが低く双耳峰には見えない
フェリーから達磨山(ダルマには見えない)
西浦集落から達磨山(ダルマの顔か?)
かつての地理院地図には達磨山の三角点104.8mが記載されていた。
新しい国土地理院地図では三角点記号が消え、標高点105mに
達磨山三角点「達磨」(2017年3月20日撮影)
達磨山山頂標識
達磨山山頂の珍しい横になったお釈迦様
姫島の七つの火山
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