国東半島山ガイド
四方山話その18   双耳峰小牟礼山と有寺山


 ガイド本掲載No.26-27「小牟礼山、有寺山」の秘密を明かそう。
 これは、前回四方山話その17と同じ山頂と三角点の話である。
 この二つの山は双耳峰であるが、梅木秀徳著「大分県山岳丘陵島嶼一覧」では、三角点「尾群」413.6mを小牟礼山という一つの山として記載している。
 また、1983年発行大分大学編「国東半島-自然・社会・教育-」のなかでも、「小牟礼溶岩」の項で「小牟礼山は西狩場部落から西1kmにある独立峰である。」と記載されている。
 ところが、三角点のない双耳峰のもう一方のピークの方が等高線420mが引かれており高いのである。したがって、由布岳のようにこの双耳峰を一つの山として捉えると山頂は420mピークの方になる。しかし、気づいた時にはすでに山頂標識も設置していた。また、一般的に小牟礼山は三角点の方を山頂として認識されているようなので、もう一つのピークの扱いをどうしようかと悩んだ。
 そこで考えた結果、「大分県山岳丘陵島嶼一覧」に小牟礼山の別名として記載されていた「有寺山」という名前を420mピークの山名にしたというのがこれまで誰にも言ってない真相である。有寺というのは「有寺山」側真玉町大岩屋の集落名であるので、この方がしっくりいくと勝手に解釈している。
 さて、では山名の「小牟礼」と三角点名の「尾群」では、なぜ漢字が違うのか。四方山話その4で記述したとおり「ムレ」は「山、丘」を意味する朝鮮半島の古い言語を起源としている。それを「牟礼」と表記する場合や「群」と表記する場合があるが、概ね「牟礼」の表記の方が多いようだ。「お」は、周りを猪群山や尻付山・ハジカミ山などの大きな山に挟まれた「小さい山」という意味ではなかろうかと考えれば「小」であろう。やはり表記としては「小牟礼」が適切なような気がする。では、三角点名はなぜ「尾群」か。
 県内には他にも由布岳の三角点名が「油布山」、夏木山の三角点名が「奈月山」、万年山の三角点名が「羽根山」など、漢字表記が違う山があるので、なぜなのか国土地理院に問い合わせた。
 その回答は「三角点に付けた点名及び読み方は、測量を行った測量士が命名いたします。通常は、三角点の名称を見るだけでおおよその場所が分かるように、その地名等を付けることが多いのですが、そのときの事情により、実際とは違う漢字があてられたり、読み方が違うことがございます。なお、一度設定した三角点の名称変更は、後続作業で使用され帳票に記載されるなど様々な影響があることから行っておらず、変更せずに管理しております。」ということだった。
 ということは、「小牟礼山」も「おむれ」という山名を聞いた測量士が「尾群」と漢字表記したのだろうということが推測される。

 ところで、国東半島山ガイドとは関係ない四方山話であるが、前述の典型的な双耳峰の由布岳は、三角点のある西峰1583.3mが由布岳としての山頂となっている。しかし、ご承知の通りあんなに離れているのに東峰も1580m(標識の表示上)と標高はほとんど同じ。奇跡の双耳峰である。
 実は以前の東峰の山頂標識の標高は1584mであった。それがいつのまにか標注が新しくなり標高も1580mに変えられていた。
 東峰の最高の等高線は1580mであるが、あの山頂の形からして1580mぴったりであるとは考えにくい。しかも、国土地理院地図でよく見ると東峰の1580m等高線は、山頂南東の岩場のマークで途切れている。それが正確であれば、山頂南東の崖付近が約1580mであると考えられる。その崖の付近から山頂標識のある最高点までは、少なくとも3~4mあるので、西峰とほぼ同じ高さであると想定される。
 いずれにしろ、由布岳の山頂が本当はどっちなのか正確に測量して決着を付けて欲しい気がする。

堂明から小牟礼山、有寺山。きれいな双耳峰
1983年発行大分大学編「国東半島-自然・社会・教育-」の掲載地図
国土地理院地図 山頂名等は掲載者記載
2015年3月8日に設置した小牟礼山頂標識
2019年のYamap報告から写真拝借。山頂標識は地面から抜けて三角点横に置かれている。
2017年3月11日に設置した有寺山山頂標識。その後の登山記録に山頂標識がないとの記載があり、既にない可能性が高い。他の山もそうだけど地面に挿した標識は抜けているか、なくなっているところが多い。鹿か猪が掘ってしまうのかなあ。再設置しないといけない。
豊後高田市ふるさと林道(立石-佐野線)から見た小牟礼山・有寺山双耳峰は周囲の山より一回り小さい。ここから見れば二つの山としか見えない。
由布岳の国土地理院地図は、西峰が由布岳の山頂
2011年1月10日の由布岳東峰山頂の標柱は1584mとなっている。
ところが、2013年1月20日の由布岳東峰山頂の標柱はいつのまにか新しくなっており、標高は1580m表示。
国土地理院地図由布岳東峰拡大
さあこの奇跡の双耳峰は本当はどっちが山頂なのでしょう?
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