国東半島山ガイド
四方山話その15 赤根山の山名

 ガイド本掲載No.14「赤根山」は、姿から見てもわかるようにきれいな三角錐の溶岩ドームである。
実は、ガイド本が完成したのちのある時、O田さんから、Y本さんという国見在住の人(ブログのじなしさんだった)が赤根山のことで聞きたいことがあるからと云うことなので電話してくれと連絡があった。
 Y本さんに電話すると「山口県在住の人で、国東半島によく出かけてくる詳しい人がいるのだけど、その人が赤根山は「岡ノ岳」(もしかしたら「奥台山」であったかもしれない)ではないのかと話があったけど、どうなのだろうか」と聞かれた。
 実は、そのことはわかっていたのでいきさつを説明した。
 それはこういうことである。四方山話その3でも紹介した県立図書館所蔵の1983年3月発行の大分大学教育学部編『国東半島-自然・社会・教育』の国東半島の地質Ⅲ.地質各論7.山陰系新期火山岩類の項に「赤根山」は「岡ノ岳」として記載されている。調べる限りでは「赤根山」に関する記述としてはこの本が最も古いので、それに従うのが正解かもしれないが、何度も記述しているこのガイド本の作成の元として参考にした梅木秀徳著「大分県主要山岳丘陵島嶼一覧」の山名が「赤根山」となっているのでそれに従うこととしたということである。
 ところが、この話は単純ではなく、2015年12月11日に火山学会で受理されたとされる別の山口大学の研究論文「国東半島,両子火山群-岡ノ岳火山の噴火活動-堀川義之・永尾隆志・奥野充」では、先の本の「岡ノ岳」と「奥台山」の記載が逆転し「赤根山」は「奥台山」となっていた。大分大学の本では「奥台山」は国見の赤根から犬鼻峠に向かうと右手(南側)にこんもりと見える400mピ-クのことで、古い両子火山群の両子山、文珠山、千燈岳、伊美山などに囲まれた盆地であった赤根に噴火した新規の火山で、噴出した溶岩は「奥台山溶岩」と呼ばれている。「岡ノ岳」と呼ばれた「赤根山」もその時期に噴出した溶岩ドームということである。山口大学の論文では、「奥台山溶岩」を「奥台山溶岩ドーム」「岡ノ岳溶岩ドーム」「岡ノ岳貫入岩帯」に再区分するとしており、「奥台山溶岩ドーム」が「赤根山」で「岡ノ岳溶岩ドーム」が大分大学の本でいう「奥台山」となる。ややこしい。
 また、県図書所蔵昭和55年(1980年)発行酒井冨蔵著「国東半島の地名あれこれ」には、「奥台」は「両子山の北斜面にくい入る伊美川の谷頭部に立地している。山地奥深くにある谷頭台地である。」と、赤根山の登山口の「畑」集落の項では、「伊美川上流は赤根付近から西流は奥台に、東流の谷頭部が畑」と説明している。この説明からすると奥台山は赤根山でなく南の400mピークのこととなりそうだ。
 いずれにしろ、火山学会では「赤根山」は別名で呼ばれているのであるが、どちらが本来正しいのかわからない中では、やはり麓の地域名を冠した「赤根山」と呼ぶのが無難だろう。

あかねの郷から赤根山はまさに溶岩ドーム状だ
大分大学教育学部編『国東半島-自然・社会・教育』に掲載されている両子山火山群の地質図には、赤根山は岡ノ岳と記載されている。
一方山口大学の研究論文「国東半島,両子火山群-岡ノ岳の噴火活動」の地図では、赤根山は奥台山となっている
ちなみにこの地図では、弥箇岳もInagawasanと別名で記載されている
同じく「国東半島,両子火山群-岡ノ岳火山の噴火活動」論文での奥台山溶岩の再分類地図
赤線の県道と登山道及び漢字の記載は掲載者A田が加えたものである。
地理院地図ではこのような位置である
赤根から犬鼻峠に向かう県道の右手にみえる山が奥台山(岡ノ岳)
(Google マップ ストリートビュ-より)
会が設置した山頂標識以前から設置されていたオレンジプレート標識も「赤根山」となっている。
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